【報告】医療コンフリクトマネジメント研修会

<医療コンフリクトマネジメント研修会に参加して>

先日医療コンフリクトマネジメント研修会に参加したのでその感想を書いてみます。

そもそも、「コンフリクト」というものは、常に自分の周りにあり、特に医療人においては患者さんとの間のそれが最も大きなものといえます。私自身の「コンフリクト」をについてカミングアウトするとすれば、それは約30年前、私がやっと研修医から独り立ちしかけ、単独で主治医になったときのことです。あまりの怒りに耐えかねて、私はカルテを患者さんに投げつけ、退院を迫ったことがありました。どうもあのあたりから私にとっての「コンフリクト」の問題は始まったように思います。その後も血の気が多い時期には手術室でペアンやコッヘルが飛ぶなど、患者さんとの間だけでなく、看護師との間でも「コンフリクト」は生じていた訳です。もちろん今はカルテも手術器具も飛びませんが。


そして月日は経ち、管理職になった今日では、自らのこと以外のもめ事にも介入せざるを得ないことが多くなり、まさに「コンフリクト」に埋もれながら過ごしているというのが実状で、いい解決策はないものかと日々考えを巡らせていたところでした。

そこに、今回の研修会のお誘いを受けたのでした。医師会からの知らせをぱっと見た瞬間、「そうだ !! これかもしれない。これを勉強してうまく活用すれば院長としての仕事も少しは楽になり、今までよりも心おきなく趣味のゴルフや囲碁を楽しめるかもしれない。そのうえ、我々の病院がいわゆる「いい病院」にもっと発展していけるかもしれない。まさに一石二鳥だ。」と半ば不埒な動機で、研修会参加を決めたのでした。

そして教本が届きました。せっかくの機会だし、初めての分野でもあるので、少しは予習をしていこうと思い、ページをめくってみました。最初は文字も大きいのですぐに終わるだろうと思って読み始めたのですが、なんと聞き慣れないカタカナ文字の多いことでしょう。普通に読み進めてもなかなか理解ができない。途中で何度も手前のページにもどりながら、スキルのところまで読むのがやっとでした。いかにも学者が書いた理屈っぽい代物に思え、「こんな理屈っぽく分かり難い教本を書く講師に習っても理解できるのか?! 本当に実践に合ったものなのか?! 」という疑問を抱きながら研修日を待つことになりました。

果たして研修が始まりました。予想とは裏腹に、和田先生のお話は落ち着いた語りで分かりやすく、中西先生の講義は饒舌で熱意に満ちたものでした。みごとに私の期待は裏切られたのでした。内容は紛争交渉に関する学問に裏付けされつつも、日頃遭遇するような身近なエピソードを題材とし、実践的で、医療用語でいうならば、まさに臨床的なものでした。そして、徐々に「コンフリクトマネジメント」、「医療メディエーション」の意味も理解できるようになり、教本にカタカナ文字の多いことの意味(直訳の日本語ではそのニュアンスが充分に伝わりにくい)も分かりました。しかし、今回参加した私たちは、まだ、この「コンフリクトマネジメント」という分野の入り口に立ったに過ぎません。ナラティブアプローチを更に学習し、実践を繰り返し、スキルを醸成することが大切と考えます。

そうすれば私の目論んだ一石二鳥が実現するかもしれません。更に欲を言うならば、この手法を用い、妻のナラティブに基づいた認知フレームを理解し、彼女のインタレストに迫ることができれば、一石三鳥かも・・・・

愛媛県立今治病院 院長 藤田 学

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<平成24年度医療コンフリクトマネジメントに参加して>

平成24年9月22日、23日に愛媛県医師会館で開催された医療コンフリクトマネジメント(基礎編)に初めて参加させていただきました。非常に穏やかでユーモアたっぷりに話をされる和田仁孝先生、エネルギッシュな中西淑美先生の指導の下、多くの情報、基礎的技術をまる2日間機関銃のようにたたきこまれ、なかなかハードな研修でした。

私自身、幸いなことに医療事故や、重大な患者とのトラブルにかかわった経験はありません。医療メディエーターの存在も今回初めて知りました。怒りや悲しみを語る患者さんの話に耳を傾け、それを支える事の大変さは想像に難くありません。現実にそのような仕事をされている方々の努力に頭が下がります。個人的にはロールプレイで患者役、メディエーター役を行い、私が日常的に行っている説明さえ医療者の枠の中での説明であり、患者さんやご家族に十分理解いただいてないのでないかと反省させられました。また、問題が生じたときに、メディエーターに入っていただくことで、患者さんやご家族のみでなく医療者側も守られる可能性も感じました。しかし、個人の努力や熱意には限界があり、メディエーターがその中立性を確保し病院の中で働くためには、病院自体の理解や努力も必要であることも同時に考えさせられ、少し重い課題を感じた2日間でした。

愛媛県立中央病院 腎糖尿病センター長 菅 政治

コメント

  • メディエーターとは、新しい時代に沿った手法だなあと思います。
    地元でのスキルアップ研修が11月にあり参加したかったのですが、都合が悪くいけません。次回のときには参加して、鉄は熱い
    の言葉のとおり薄れゆく記憶に歯止めを掛けたいと思っています。
    9月の2日間は医療に従事し始めて受けた研修の中でも、最も心揺さぶられたものの一つとなりました。

    2012年10月23日9:33 AM | 戸田 泰隆

  • 戸田事務長 様
    コメントありがとうございます。戸田様が講師の言葉に共感し頷き、熱心に受講されていた様子が記憶に残っています。私もそうでしたが、事務職はついその場を収めることに意識が向きがちで、また自身の経験の中で自分流の対応(解決)方法を身に付けて、それで良し・・・みたいなところがあるのではないかと思います。
    今回の研修が「最も心揺さぶられたものの一つ・・・」との事。私が初めて基礎編の研修を受講した時も、まさに目から鱗でした。
    戸田様の病院にメディエーション・マインドが拡がりますことを祈っております。
    支部研修会、今回は残念ですが次回はぜひご参加ください。お待ちしております。

    2012年10月23日11:42 AM | JAHM四国支部 徳永