【報告】 平成23年度シンポジウムを開催しました

日本医療メディエーター協会四国支部シンポジウムが平成24年2月11日、新装なった愛媛県医師会館5階の大ホールで127名の参加を得て行われました。

(1)「患者安全と院内メディエーション」と題して全国社会保険協会連合会患者安全推進室長遠田光子先生から、(2)「医療安全の水平展開と垂直展開」と題して横浜市立大学付属病院医療安全管理学教授橋本廸生先生からご講演を賜りました。また、(3)「四国支部活動報告」を支部長である愛媛県医師会常任理事今川俊一郎先生から行っていただきました。

遠田光子先生は医療メディエーター協会のトレーナー1期生であり、ハーバード大学医学部関連病院コンセンサス文書を日本に導入され、医療有害事象対応指針を設定されました。その中で、「医療は安全を目指さなければならない」、「医療は患者本位でなければならない」が中心的命題であり、有害事象対応指針は下記の7本の柱によって運用されていると紹介されました。

  1. 初期行動
  2. 真実説明
     事実説明の基本方針は’逃げない、隠さない、ごまかさない

  3. 謝罪
     共感表明謝罪と責任承認謝罪

  4. 院内メディエーション
  5. 根本原因分析
  6. 報償
  7. 報告

また、医療メディエーションには(a)役職としてのメディエーターと、(b)汎用対話モデルとしてのメディエーションがあり、メディエーションはスキル(技法)の取得よりもウィル(意思)が大切で、患者に寄り添う気持ちや付き添う気持ちが重要だと述べられました。全国社会保険協会連合会傘下の病院で院内医療メディエーターを養成し、2011年末までに基礎編受講者234名、継続編受講者15名、フォローアップ研修受講者68名になったと報告されました。なお、院内医療メディエーターを養成することにより病院内で担当者の意識や判断する知識技術が向上したばかりでなく、各自が丁寧に対応するようになり、謝罪や正直に話すという気持ちや病院全体で対応する意識が向上し、危険意識が向上し早めに相談するようになったと報告されました。最後に、事故からどのように医療安全に繋げていくのか、事故を起こした当事者へのサポートも大切であると述べられました。

橋本廸生先生は医療安全をめぐる現在の問題に対して、(1)患者参加の促進と、(2)中小医療機関での医療安全の推進が重要であり、(1)患者参加の促進には医療安全の垂直展開によって、また(2)中小医療機関での医療安全の推進には医
療安全の水平展開によって乗り越えることが可能になると述べられました。

水平展開のためには医療施設の中に安全文化を作り上げることが大切であり、中小医療機関では施設のリーダーの力量に依存していることから、県あるいは医師会の働きかけが重要と述べられました。

垂直展開のためには患者参加の場の創成が重要であり、患者の参加により医療は患者・医療者対峙型から患者を巻き込んだ形の、広い意味では市民を巻き込んだ形の医療安全の推進が可能となると述べられました。患者参加はすでに患者確認や化学療法、服薬管理、転倒転落予防などで行われており、もっともっと推進すべきと強調されました。医療の場では情報の非対称や状況の非対称が特徴であり、医療を医療者は「技術を中心に見ている」のに対して患者は「人間関係を中心に見ている」ことを銘記すべきであり、この両者の差を埋めるのが医療メディエーションではないかと述べられました。最後に、坂の上の雲を引き合いに出され、愛媛には「やらなければならないことは、やらなきゃならないんでしょう」という文化があるのではと締めくくられました。

今川先生は愛媛県医師会を中心としたこれまでの取り組みを紹介されました。愛媛県医師会では医療事故や医療過誤は必ず起こる、ボタンの掛け違いを防ぎ、初期対応をキチンとするためにも医療メディエーターを養成することが重要であるとの考えから、(1)50床に一人の医療メディエータを養成しようとの目標のもとに、医療コンフリクトマネジメント研修会を年4回開催し医療メディエーターを現在までに480人養成してきたこと、(2)日本医療メディエーター協会四国支部研修会、シンポジウムを2009年6月から年1回開催するとともに、研修会を年に3回開催してきたこと、(3)医療メディエーター推進テーム「みかん」を創出し、年に約10回出動してきたこと、を報告されました。最後に、これまでの養成講座を受講した方の感想(初期対応が可能になった、明日から行動が変わる、診療に役に立つなど)を紹介され、報告を総括されました。

愛媛労災病院副院長・産婦人科部長 宮内文久