【報告】近況報告

今川です、近況報告をさせていただきます。

1.今治眼科懇話会

「眼科領域における医事紛争と医療メディエーション」
日時:平成23年4月14日(木)19:00~20:30
会場:今治国際ホテル

今治市内の眼科開業医とそのコメディカルの方々約20名が参加されました。講演の前半は、眼科の医療裁判判例や県内医事紛争事例を紹介して、後半部で、医療メディエーションの理論やスキルについてお話しました。医療メディエーションは初耳という方が多く、非常に熱心に聴いてくれました。

2.愛媛県臨床整形外科医会会誌に掲載予定の原稿、

「インタレストは何だろうか?」を、このブログに一足先に紹介させていただきます。

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「インタレストは何だろうか?」

今川整形外科 今川俊一郎

「コミュニケーション方法」について考えてみたいと思います。「インタレスト」とは、話し手や聴き手の「心の中に隠された本当の欲求」を意味しています。インタレストは、「私は・・・したい」と表現され、そして、1つだけではなく複数あって、表層から深層へと重層構造になっています。話し手のモチベーションを表現しています。実は、話し手である本人自身もこのインタレストに気付いていないことが多いのです。実際の対話の途中でちょっと立ち止まり、相手や自分のインタレストを冷静に考えてみると、モノの見方や見え方が変わってきて、対話が自然と円滑に展開していき、人間関係が好転する場面に遭遇できるかもしれません。

私は、愛媛県医師会常任理事として、医事紛争処理を担当するようになって8年になります。これまでに多くの事件に関わってきました。医事紛争とは、一言でいえば、医師にも患者にも“悲惨と消耗と荒廃”しか残らないものと考えています。医事紛争処理委員会の委員すべてが“明日は我が身という暗い気持ち”で、毎回審議に参加していると思っています。医療民事裁判件数は毎年減少傾向にあるとはいえ、日本医療機能評価機構の医療事故やヒアリハット報告件数は増加しています。医療事故も医療ミスも決して無くなることはありません。むしろ、事故やミスは、いつでもどこでもだれにでも必ず起こり得るもの、と肝に銘じておくべきでしょう。

医事紛争処理委員会審議の中で、事実検証の結果、どう見ても医師に落ち度はないし、患者もクレーマーやモンスターとは思えない、にもかかわらず紛争激化しているという事案が少なくありません。いわゆる“ボタンの掛け違い”ですが、患者・医療者相互の意思疎通を欠いた結果が拗れた膠着状態を惹起しています。この場合の社会的・法律的な収拾策は、“医療者側の説明不足”とか“患者側期待権の侵害”といった言葉で片づけられますが、医療現場の壊れてしまった信頼関係はもう元に戻りません。当たり前のことですが、“拗れたものを繕うよりも拗れないようにすること”の方が簡単であり、いい結果を期待できることは道理です。どこかの国の原発事故対応はこの悪い見本の典型だと思いませんか?

愛媛県医師会では、約4年前から、医事紛争の「初期対応」に着目してきました。具体的には、初期対応の役割を担う「医療メディエーター」の組織的な育成に力を注いできました。現在、愛媛県内の医療機関には、約350名の医療メディエーターが活躍しています。その医療メディエーターのスキル(手技)の極意が、「インタレスト」を的確に把握することなのです。言い換えれば、「私は・・・したい」という「私」メッセージの形で、「隠れた欲求」をキチンと捉えておくことなのです。適切な「インタレスト」が取れておれば、対話によって人間関係が修復され、おのずとWin-Win(双方が満足する)解決に繋がっていきます。応用範囲は紛争場面だけではありません。通常診療中、患者さんを相手に「インタレスト」を考えてみてください。また、仕事中だけではなく、家族や友人や職員に接する時にも、是非とも試してみてください。今までとは違った別世界に足を踏み入れることができるかもしれません。