日本耳鼻咽喉科学会愛媛県地方部会 愛媛県耳鼻咽喉科医会

健康ナビインデックスページへ戻る
味覚障害 - まず鑑別診断が必要、舌の状態精査・血液検査で -
問い 78歳の主婦ですが、昨年の十月中旬ごろから、舌の感覚、味覚がわからなくなりました。お水が、塩辛くなりました。ポットのお湯が、甘いお湯と感じます。また副食物一切の味が不明です。好物の和菓子や、砂糖、あめ等も少しも甘く感じません。毎日のごちそうも砂をかむような思いです。何か良い治療があればお教えください。
 なお、総合病院で、MRIとか、血液検査等も受けましたが、異常なしで原因不明と言われました。私の病歴としましては、平成元年ごろに、軽い脳血栓になり、十五日間入院しましたが、後遺症は一つもなく元気です。薬は、血の流れを良くする錠剤を、一日一錠ずつのんでいます。
 
答え   わが国における味覚障害の患者数は年間十四万人と推定されています。これは人口十万人あたり約百四十人の発症率となり、たいへん多いものです。年齢的には五十―六十歳にピークがありますが、高齢者に多いのが特徴です。また男女でいうと、女性の方が多いようです。

   原因はさまざまですが、味を伝える神経の直接的な障害による一次性のものと、他に原因が存在して味覚障害が生じてきた二次性のものに大きく分けることができます。一次性の味覚障害は味覚に関する脳神経の一つ、顔面神経が障害される場合も起きます。病気としては中耳炎、顔面神経マヒ、聴神経腫瘍などがあります。また脳の血管病変や腫瘍性病変などによっても起こる場合があります。

   二次性味覚障害として一番多いのが薬剤性味覚障害です。その原因となる薬剤はさまざまですが、主なものとして降圧利尿薬、冠血管拡張薬、肝治療薬、抗生物質、抗がん薬、インターフェロンなどがあげられます。質問者の方も血液の流れをよくする薬を服用されているということですが、一度薬局で調べてもらったらどうでしょうか。

 次に多いのが亜鉛欠乏性味覚障害です。亜鉛が欠乏すると食欲不振、成長不全、皮膚病変などさまざまな症状が出現します。味覚障害もその一つです。

   口腔や唾液腺の病気による味覚障害もあります。舌炎や舌苔による味覚障害や口内乾燥症に伴う味覚障害で高齢者に多くみられます。口内乾燥の原因としては、特に女性にみられる加齢に伴う唾液腺の萎縮、向精神薬などの薬剤の影響、放射線治療、唾液が少なくなる病気などがあげられます。ほかに腎不全、肝不全、糖尿病、甲状腺機能障害などの全身疾患も原因となります。またストレスからくる心因性味覚障害というのもあります。

   検査としては舌の状態を耳鼻咽喉科で詳しく見てもらい、血液検査も行います。電気味覚検査といって舌に刺激電流を流して障害の程度を判断する検査を行います。場合によってはMRIも必要でしょう。和菓子のイメージ

   治療ですが、薬剤性の例では原因となる薬剤の減量・中止・変更が必要であり、口腔疾患や全身疾患によるものではそれらの治療がまず第一です。服用薬剤や全身疾患の影響で亜鉛栄養状態が不良と思われる場合には亜鉛の内服治療が行われます。病院で処方してもらうことが可能です。また健康食品にも少量ですが含まれています。ただ亜鉛の内服に反応して味覚障害が改善するのは、亜鉛欠乏が原因として関与している味覚障害です。いずれにしても、まず専門医により鑑別診断が必要と思われます。

(瀬越 昌弘)

インデックスページへ戻る