ご相談の内容は、鼻炎で鼻づまり(鼻閉塞)をおこしているので中耳炎になりやすい、それで鼻閉塞を治したいということだと思われます。鼻閉塞は鼻炎だけにおこる状態ではありませんので、まず鼻閉塞について少し説明させてもらいます。
鼻には大きく分けて(1)嗅覚作用(2)呼吸の道(加温、加湿、除塵)(3)共鳴作用―と3つの働きがあります。このうち呼吸の道が狭くなること、つまり鼻呼吸の障害が鼻閉塞です。鼻閉塞はほとんどすべての鼻疾患にみられるといってもよい状態で、閉塞の程度も軽い狭窄から完全な閉塞までいろいろあります。また、時間的にも急性鼻炎のような場合には鼻粘膜のはれと分泌物の滞留により一時的につまることが多いですが、慢性副鼻腔炎、鼻茸、慢性肥厚性鼻炎やアレルギー性鼻炎などでは持続的に常時つまることが多いのです。
左右の鼻が、1日のうちで時間や頭の位置によって交代性に閉塞することは、鼻中隔弯曲症や肥厚性鼻炎などによくみられます。鼻の疾患ではありませんが、アデノイド増殖症があると鼻を後方からふさぐことになり、鼻閉塞をおこします。強度の口蓋扁桃肥大の場合も同様です。生理的にも飲酒、降圧剤や血管拡張剤などの薬の服用、月経などで鼻粘膜の血管が拡張したときにも鼻閉塞はおこります。
ご相談の患者さんの場合は6歳と3歳という年齢と、常時鼻閉塞をおこしているようですので、これから考えますとアデノイド増殖症、慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などの疾患が考えられます。次にこれら疾患の説明をさせてもらいます。
アデノイド増殖症は上咽頭(鼻とのどの境あたり)にあるリンパ組織が大きくなった状態です。幼小児期に発病し、6〜7歳ころに最大となり、その後縮小してきます。診断は上咽頭を視診することによりつけられます。治療は保存的療法にて改善のみられない場合や、中耳炎をおこしやすい場合などには外科的切除を行います。
慢性副鼻腔炎は鼻の周囲にある骨の空洞内の粘膜がはれて、分泌物がたまる疾患で、いわゆる蓄膿症と呼称されている疾患です。この分泌物が鼻内に滞留したり、鼻茸ができたりすると鼻閉塞をおこします。診断は鼻の視診とX線写真によってつけられます。治療は局所的には鼻内の分泌物を除去し鼻内に薬剤の散布を行い、吸入療法を行います。全身的には粘膜のはれを抑える目的で抗生物質や消炎剤の投与を行います。特別な場合を除き、小児のうちに外科的治療をすることはありません。
アレルギー性鼻炎は近年増加している疾患で、小児にもよくみられます。くしゃみ、鼻みず、鼻づまりがよく知られる症状ですが、鼻閉塞のみを訴えるかたもかなりいます。診断は鼻の視診、X線写真、アレルギーの原因物質を調べることによってつけられます。治療は抗アレルギー剤の内服、外用剤の使用ですが、家のちり、真菌などが原因となって発症した通年性アレルギー性鼻炎の場合は、これら原因物質の減感作療法つまり体質改善がこれに加わります。
以上駆け足で鼻閉塞について説明させてもらいましたが、鼻閉塞はこれら以外にもいろいろな原因によっておこります。主治医とよく相談をされて、必要とあれば精密検査をうけられるとよいと思います。
(田所 広文)
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