日本耳鼻咽喉科学会愛媛県地方部会 愛媛県耳鼻咽喉科医会

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滲出性中耳炎 - 原因不明の事例多数 治療しないと難聴にも -
   4歳になった息子のことで相談します。昨年5月に幼稚園で耳の検査があり、滲出性中耳炎の疑いがあるといわれ、耳鼻科に通っています。今年にかけて度々切開してきました。春にはアデノイドを手術で切り取りました。ここ1年何らかでいつも薬を飲んでいます。力も強く、泣き叫ぶ息子を看護婦さんと4人がかりで押さえつけての切開、親としてはいたたまれません。先生は、チューブを人れようかと言います。アデノイドもとり、効果を期待したのですが、あまり効果もなく心配です。耳にウミがたまるのは、なぜなのか、分かりません。耳の聞こえも悪くなり、イライラしています。ずっと、このままなのでしょうか。原因は何なのでしょうか。
 

答え   滲出性中耳炎は本来は鼓膜穿孔がなく、無菌性滲出液の貯留をみる中耳炎のことをいいますが、最近はその貯留液の性状のいかんにかかわらず中耳腔に貯留液をみる非化膿性中耳炎のすべてを滲出性中耳炎として扱っています。

   発病年齢は圧倒的に幼少児に多く、その年齢分布は5〜7歳に集中し、10歳を過ぎると急激に減少します。以前は風邪をひいたときなどに化膿性中耳炎を併発して症状がでて病院にかかる例が多かったのですが、最近は一歳半児検診、三歳児検診、園医による乳児・幼椎園での検診で症状のないときに発見される例が増えています。

   原因としては、(1)種々の原因で耳管(耳の奥と鼻の奥をつなぐ管)が狭窄して通気障害が起こったときに、鼓室内の酸素などが粘膜血管に吸収されて陰圧になり、粘膜に病変が生じ鼓室内に滲出液がたまるという説(2)ウイルス感染説(3)化膿性中耳炎からの移行説(4)アレルギー説−と諸説ありますが、これらがいくつか組み合わさっていることが多く、はっきりこれだと確定はしていません。

   症状は難聴、耳閉塞感(耳栓をしたときのような感じ)、自声強聴(自分の声が響いて大きく聞こえる)、耳鳴りなどですが、幼少児では発症が急激にきたとき以外は自覚症状を訴えることはあまりありません。

   診断は鼓膜の視診(鼓膜の内陥や貯留液の透見)、聴力検査、チンパノメトリ(鼓室内の圧力をはかる検査)などでつけられます。

   治療は(1)内服薬:耳管粘膜の炎症を抑える目的で抗生物質や消炎剤の投与を、貯留液の排泄のために粘液溶解剤や漢方薬の投与を行う(2)原因疾患の治療:耳管の狭窄が本疾患の成立に関与していることが多いため、アデノイド増殖症や鼻および咽頭の慢性炎症性疾患やアレルギー性鼻炎に対する治療を並行して行う(3)耳管通気療法:鼻から耳管に空気を通して鼓室内圧を正常化し貯留液の経耳管的排泄を促す(4)鼓膜切開・穿刺:耳管通気療法のみでは貯留液の排泄が困難な場含などに行う(5)経鼓膜的チューブ挿入術:何度も鼓膜切開を施行しても貯留液がたまってくる場合などに行う(鼓膜チューブをいれるとチューブのあなから鼓室内へ空気が入り耳管通気療法をしたのと同じ状態になる)、などがあります。

   予後は、たとえば上気道炎に続発して発症したと原因がはっきりとしている場合は風邪症状の消失とともに滲出性中耳炎は治癒することが多いです。しかし、原因が不明な場合が多く治療が長引くことも多々ありま。治療をせずにおくと難聴が残り、癒着性中耳炎、真珠腫性中耳炎に移行することもあります。

   ご相談のお子さんの場合ですが、主治医の先生は順序立っていろいろと積極的な治療をされているようです。チューブを入れる時期がきているのかもしれません、もう一度よく相談されてはいかがでしょうか。

(田所 広文)

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