日本耳鼻咽喉科学会愛媛県地方部会 愛媛県耳鼻咽喉科医会

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気になる「めまい」 - 全身と平衡検査ぜひ 潜む病気の見極め大切 -
   三十歳主婦ですが、六−七年前、天井がぐるぐる回り横になりました。目から星が出るような感じもしました。生活には支障がなかったので病院にも行きませんでしたが、パート勤務中、フラフラして寒気がし、病院に行ったところ風邪と診断されました。
   その後もめまいがし、スーと意識がなくなって倒れそうになる感じがするので、内科診断を受けましたが、血圧、尿、レントゲン、心電図とも異常なしでした。神経内科でも心配する必要はないと言われ、薬をもらい、少しは良くなりました。
   しかし、最近は効かなくなり、長い時間は座れず、倒れそうになり、我慢していると冷や汗が出るというか気分が悪くなります。キーンという耳鳴りも時々します。実際に倒れたことはありませんが、どういう原因でこういう症状が出るのでしょうか。病名は何で、どの科に受診したらいいでしょうか。
 

答え   発病されてから六−七年もめまい症状で治療を受けておられますが完治せず、いろいろな検査でも病名がもう一つはっきりしないように拝察します。めまいとは「身体の位置、運動の感覚の異常」であり、内耳の病気(メニエル病など)、脳幹、小脳などの中枢神経の異常(腫瘍、出血など)、首の病気(むち打ち症など)、心疾患、血圧異常などの循環障害、血液疾患(貧血など)、自律神経異常(立ちくらみなど)、ホルモン異常など、いろいろな原因で起こります。また心因性の場合もあります。

   これらの病気にはそれぞれ起こるめまいに特徴があります。めまいの性質を大きく分けて(1)回転性(天井が回るなど)か、非回転性(浮動感、眼前暗黒、失神感など)か、(2)その時難聴とか、耳鳴りが一緒にあったかどうか、(3)吐き気を伴ったかどうか、などを区別して考えます。あなたの最初のめまいの時のような回転性めまいの場合は内耳、聴神経系統の詳しい検査が必要となります。片側(時に両側)の難聴、耳鳴りが一緒にあるときはメニエル病などの可能性があります。

   同じ内耳の病気でも風邪症状の後で起こる前庭神経炎ではめまいはありますが、聞こえは悪くないのが普通です。また内耳の奥の内耳道という部分で聴神経(聞こえ、平衡感覚の神経)に異常があっても、その中枢の脳幹、小脳の病気でもこのような症状が起こることがあります。
あなたの場合、頭部のCT(コンピュータ断層)検査などで問題がなかったようですので、おそらくは聴神経腫瘍や、小脳などの病気は除外でき一応安心ですが、経過によっては再検査が必要です。

   次に非回転性めまいの場合は先に書いたいろいろな病気のときに起こることがあり、全身的に系統だった検査が必要となります。あなたの場合、回転性めまいは一度だけで、その後は目の前に星が飛んだり、車酔いのようなめまいなどを感じておられます。このような場合は原因として複数の疾患が関係していることもあります。また、一つの病気でも、徐々に悪くなると非回転性めまいで、急激に発症すると回転性となる、など病気の起こり方でめまいの種類が異なる場合もあります。

   お手紙だけでは診断は困難ですが、要はめまい発作そのもので命取りになるようなことはないのですが、危険性のある重篤な病気が背景に潜んでいるかどうかの見極めが重要です。
   幸いあなたの場合は薬で現在はまずまずの病状経過のご様子ですが、もし病状が反復したり、進行したりするようなら、一度めまいの専門外来で診察を受けられるとよいと思います。めまいの診断には全身検査も必要ですが、内耳機能をしらべる前庭(平衡)検査を欠くことはできません。めまい外来を行っている耳鼻咽喉科専門医を受診されると良いでしょう。

(松本 康)

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