日本耳鼻咽喉科学会愛媛県地方部会 愛媛県耳鼻咽喉科医会

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舌がん

最近、芸能人の方の舌がん公表が話題になりました。そこであらためて舌がんという存在に関心を持たれた方も多いのではないでしょうか。舌がんは、口腔(こうくう)がんの一つで、口のなかにできるがんの中では、最も多いがんです。日本では近年、口腔がんの罹患(りかん)率、死亡率ともに増加しています。しかし、アメリカをはじめとした先進諸国では、口腔がんの早期発見・早期治療が積極的に行われているため、がんになる確率は高くても、死亡率は減少傾向にあります。この違いは一体どこにあるのでしょうか。その一つに日本では、他のがんに比べて口腔がんの認知度が低いことが原因のひとつと考えられています。舌がんは全てのがんのうち1〜2%程度と比較的まれな病気であり、健康診断や人間ドックでも口腔内の検診は多くの場合は項目にあがってきません。早期発見するために舌がんがどんな病気なのかを知っておく事が大切です。舌がんは慢性的刺激がその原因といわれ、歯並びの悪い歯や、破損した金属冠あるいは尖った角のある歯が常に舌に当たったりすることによって、舌に潰瘍や小さなしこりができ、長い期間刺激が続くことで発生すると考えられています。さらに、熱い食品によるやけどや度重なる過度な刺激が誘因となることもあります。また、習慣的な喫煙や飲酒による慢性的刺激もがんの発生の要因となり得ます。

一方で舌がんは飲酒や喫煙を長期に及んで続けていない20代の若い方でも発症することがあります。その場合は慢性的刺激が原因ではないと考えられていますので若い方も注意が必要です。

舌がんは、その他の多くのがんとは違って、皆さん自身で、それも早い段階で見つけることが可能な病気でもあります。舌は自分で触れたり見たりすることができることができるため、患者さんの約3分の2は、早い時期に診断されています。最も早い段階の病期(ステージ)Tであれば約95%の方が治る病気でもあるのです。そう考えると舌がんを「自己検診」で早期に見つけることが大変重要だなとお分かりいただけるかと思います。

舌がんの典型的な症状は、舌の両側の縁の部分にできる硬いしこりです。舌の表面中央や先端にできることはほとんどありません。つまり舌の両側の縁、舌の下を鏡で見て色が白くなり過ぎた部分がないか、また赤くなり過ぎた部分がないか表面が凹凸になっていないか見てください。さらに指で触ってみて固いしこりがないか確認してみましょう。そのいずれかがあるようなら病院を受診してみてください。それでも初期の舌がんは口内炎に似ており、病院でも「口内炎」と診断されることがあります。「口内炎」を治療していても2週間近く治らないようであれば、口腔内をみるのが専門であるお住まいの地域の耳鼻咽喉科、歯科に相談してみましょう。

(うぐもり耳鼻咽喉科  鵜久森 徹)

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