顔の骨の中には、鼻を取り囲むようにいつくかの空洞があります。空洞は上から順に1.額のあたり、2.両眼の間、3.頬のあたり、4.鼻の奥に全部で4カ所あり、これらを副鼻腔と呼びます。この副鼻腔に炎症が起きた場合を副鼻腔炎といいますが、一般的にはちくのう症と呼ばれます。副鼻腔炎は耳鼻咽喉科の日常診療において患者数も多く、治療に時間がかかったりする病気ですので、その症状や治療法などについてお話したいと思います。
副鼻腔炎でよくみられる症状は、鼻水や鼻づまり、頭痛です。カゼにかかった時にこのような症状が1ヶ月ほど続く場合は慢性副鼻腔炎になっている可能性があります。また、特徴的な症状としては、後鼻漏と嗅覚低下があります。後鼻漏は、鼻水がのどの奥に流れてきて、のどに張りつくような症状であり、その刺激から痰のからんだ咳が続くこともあります。嗅覚低下は、副鼻腔の粘膜が炎症で腫れるために鼻の通りが狭くなり、ニオイ分子が嗅粘膜まで到達しないことで起こります。
慢性副鼻腔炎の診断は、まず鼻鏡という鼻をのぞく器具を用いて、鼻の粘膜の状態や膿性の鼻水がたまっていないかを確認します。次にレントゲン検査や鼻の奥を詳細に観察できる内視鏡検査を行い、骨の中のどの副鼻腔に強い炎症があるかを見ます。小児の場合は花粉症などのアレルギー性鼻炎を合併していることが多く、合併率は40?69%との報告があります。また、近年はアレルギーが発症に関与する新たな副鼻腔炎の病型(好酸球性副鼻腔炎)が増加してきていると言われていますので、必要に応じてアレルギーの検査を行います。
慢性副鼻腔炎の治療の基本は、鼻の通りを良くさせて副鼻腔にたまった鼻水を排泄させることです。耳鼻咽喉科では、鼻の中に薬液をスプレーして鼻の通りを良くさせ、吸引器具を用いて鼻水を除去する処置を行います。膿性の鼻水が多く、頭痛がひどい時には、抗生物質や消炎鎮痛薬の投与を行いますが、痛みよりも鼻水や後鼻漏の症状がみられる場合には、マクロライド療法が効果的です。これは、マクロライド系の抗生物質を通常服用する1日量の半量で2?3ヶ月間投与する治療法で、小児の慢性副鼻腔炎でも使用できます。これらの薬物治療でも症状が十分改善しない場合には手術治療の適応になります。慢性副鼻腔炎においても、現在は内視鏡手術が導入されていますので、以前よりも低侵襲な手術が可能です。
これからの季節、カゼをひいた後にいつまでも鼻水が出る時や花粉症と思っていたのにのどに痰がからんだような症状が出る時にはぜひお近くの医療機関にご相談してみてください。