鼻やのどからの迅速検査・・・過信は禁物!! |
今年の夏、西条市西部で百日咳の報告が相次ぎました。 しかも、報告があったのは市内の「ある医院」からだけでした。 西条市内のほかの医院からは1例の報告もなく、また県内の他の地区からも1例の報告もなかったため、 愛媛県衛生研究所が同医院から提出された検体(のどより採取)10数例の詳しい検査をしたところ、 1例も菌は検出されなかったようです。 つまり全例百日咳ではなかった可能性が高いのです。 百日咳は感染力が強いため、誤って診断をされた子たちが通う園も家族もパニックになります。 そしてなにより本人たちが一番つらい思いをしたと容易に想像されます。 当医院にも「園で百日咳が出た」と駆け込んでくる例が2か月くらいにわたり続出し、対応に苦慮しました。 というのは、ほとんどの子どもは2歳までに百日咳を含む4種混合ワクチンを複数回受けており、 6歳くらいまでは基礎免疫がしっかりあるため、流行にいたることはまず考えにくいという事実があります。 百日咳は咳が特徴的なうえ、血液検査でも白血球がすごく増えるなどの異常がみられますが、 どうやら「その医院」では「のどからの迅速検査」だけで診断をつけていたようです。 インフルエンザに代表される「のどや鼻からの迅速検査」はあくまでも診断の補助的な手段であり、 我々小児科専門医が感染症を診断する際には、 症状やまわりの流行状況 そして必要に応じて血液検査・レントゲン検査などの結果もあわせて総合的に判断します。 その判断には医師の経験と技量が問われます。 決して「迅速検査ありき」ではありません。 昨今、検査を希望する保護者の方が目立つ状況に、私はほとほと困り果てております。 園や学校や病児保育施設からの検査要請の圧が強いということもあろうかと思われますが、 いやな検査を受けるのが自分(保護者)ではなく子どもであり、 おまけに診察・検査料の窓口負担がないとなると、 保護者の方も安易に検査を強く希望されるのが現状です。 そのうえ、今回の事例のように信頼性の低い検査を過信して、誤った診断をする場合や 検査をするタイミングの誤りから治療が遅れる場合など、 「迅速検査」によるデメリットは数多くあります。 「迅速検査」で簡単に診断できると一般の方は考えがちですが、決してそうではないことを肝に銘じてください。 自分たちの都合で「念のために」と安易に検査を希望し、 結果が陰性だったら「ああ、よかった!」という保護者の多いこと!! そこには痛い思いをした子どもたちがいることを忘れてはなりません。 ただ、それに応えて安易に検査をするほうにも大いに問題があると思います。 私は一律に「迅速検査」を否定しているのではありません。 小児科のプロと自負していますので、 こどもをまずしっかり診察して病気の状態を把握し、 次に保護者の事情や園の様子などを詳しく聞き、 検査が必要かどうか、いつするかなどを総合的に判断します。 無下に「検査する必要なし!!」などと言い放つことはしません。 でも最近は説明するのに疲れ果てて、検査しがちになっていると反省してますが・・・。 いずれにせよ子どものことをまず考えて検査をすべきかどうかを判断していますので、 ご了解ください。 2024年12月 トップページにもどる |