マスコミ時評
〜愛媛新聞メディアのページより転載〜

少子化社会 〜財源の有効利用検討を〜(新野 正治)

 少子化が社会問題として取り上げられ約20年が経過する。出生者数も合計特殊出生率もほぼ一貫して低下し続け、かつ減少速度は余りに急激である。07年以降総人口でさえも減少するとされる。少子・高齢化社会というより、人口減少・高齢化社会への突入である。

 昨年12月3日に少子化社会白書が初めて閣議決定された。人口や出生率の変化、少子化の原因・背景、想定される社会的・経済的影響、対策等が示され、分析も行われた。

 愛媛新聞でも白書を取り上げ、「すべての前提は安心して働き続ける場が確保されることだとまずは心得たい」(04.12.05社説)とした。前向きな対策としてはそう理解すべきなのだろう。

 少子化対策は直ぐに効果が見えない。各種施策を実行し、効果があったとしても、妊娠、成長し生産者人口が増加するまで約20年が必要であり、これを見越しての政策実行が必要である。

  このため、より早く真剣に対策にとりかかる必要があった。目安となるのは総人口の減少でなく合計特殊出生率である。同率は03年でも1.29ショックと言われる程の戦後最低数値であり歯止めはかかっていない

 第2次ベビ-ブ-ム世代が出産世代に当たる05年から5年間は対象女性人口が800万~900万台とされる。白書では、これを重要な好機であるとしながらも従来からの「雇用環境整備」「待機児童ゼロ作戦」など各省庁の寄せ集め案で立ち向かい、新たな提言に乏しい。このため、愛媛新聞は白書は総花的であるとし、各紙も迫力に欠けるとした紙面が多かった。

 現在、社会保障給付費の内、高齢者向けは69.9%で、児童手当など児童・家庭関係は3.8%である。少子・高齢化対策といっても著明な差がある。今回高齢者関係給付を見直し、少子化対策関施策を充実させる必要があるとした。

 しかし、選挙権の無い子どもより、選挙権のある高齢者に多くの施策をした方が選挙で有利と考えている選良の存在こそが、子育て支援の大切さは理解されながら効果ある施策が実行されない原因とされるなら、将来は暗い。現在と逆に出生抑制を言われた時代の74年版人口白書では、「政治や行政に携わる人々の人口問題への認識が極めて不十分」とされた。目標は反対で原因は30年前と同じである。

  中央紙でも殆どの紙面で「少子化」に対して否定的な面が強調された。しかし、「子どもを強引に増やすことよりも、現状を避けられないとして一度受認し、そうなった社会において限られた財源や社会資源の有効利用法を検討する。これを踏まえて驚異的な速度で少子・高齢化社会を迎える日本が、来る社会に対処できる体勢を世界に提示することは何事にも勝る日本の存在表明となる。」等の意見表明があればと望むのは筆者だけであろうか。

(松山市医師会理事)